2013年10月17日木曜日

好きこそものの上手なれ

昔の人はほんとに上手いこといいます。

上手いかどうかは置いといて、私が高校のダンス部からもう20年以上ダンスを続けてきているのは、好きだから、の一言に尽きます。
踊ることそのものも好きだし、作品作りで人と関わるのも、舞台に立ってお客さんの反応を見るのも好きです。人が踊るところを見るのも好きです。

でもそれってなんか青臭いよね、と恥ずかしく思う気持ちもなくはないし、好きとか何とかは吹っ飛ぶぐらい切羽詰まることも多々あります。
なんでこんな大変な事してんの!?と本気でわからなくなる事もしょっちゅうです。

ですが今回7人の大学生達と一緒に一つの舞台を作り上げ、「好き」という気持ちは何にも勝ると改めて思いました。




予算もない、知識も技術もない学生たちが集まって何ができるのか。
私にはわからなかったし、本人たちにもわからなかった。
ただ私は公演を一つうつことの大変さだけは身に沁みてわかっていたので、何とかそれだけわかって欲しいと思っていました。

もっと率直に言うと、大人気なくも、丸投げされてたまるかと思っていました。
知識と技術がないなら、アイデアと情熱と時間を差し出せ、と迫りました。
アイデアを出してもらったにしても、それを形にして体現する、しかもお金をもらう公演に仕立て上げるのはどんだけ大変な事か、思い知れ!一緒に苦しめ!ぐらいに思ってました。

それを伝えるには、稽古場に来てもらうのが一番です。
用事がない時はとにかく毎回稽古に来いと伝え、特にやってもらう事がなくてもただ稽古を見ていてもらいました。
ほんの1分の曲に振付をするのにどれだけ時間がかかるのか。
たった一行のセリフの言い回しを変えるためにどれだけ悩むのか。
(私が優柔不断で遅いだけですけど)
学生たちはほんとによく汲みとってくれました。

特に照明、音響に関しては作品にダイレクトに関わるだけにどこまで要求していいのかの線引に悩みましたが、結局劇場に入っちゃうとあれもこれもと要求してしまいます。
学生の事を思うとできるだけ簡単にしてあげたいけど、作品の事を思うと譲りたくない。
一つ何かを要求するたびに「できる?」と聞きましたが、「無理です」とは言われませんでした。

それでもまだ、本番を迎えるまでは内心色々心配しっぱなしでした。普段周りにいる制作さんやテクニカルスタッフの動きを見ているだけに、抜けているところがないか、気がついていないところはないかが気になって、自分の事はいつも後回しでした。

これも大人気なくも白状しますけども、ほんとは演出と出演に集中したかった。
脚本を書くのも、芝居の演出をするのも、作詞をするのも、大量のセリフを覚えるのも、1時間以上舞台に立ちっぱなしなのも、全部初めてだったからです。
自分でいっぱいになれない事のフラストレーションはいつもありましたが、学生たちの真剣な表情の前で、そんな態度は表に出せない。
稽古場でも、台本を手にした学生たちが見つめているので適当にやる事はできませんでした。自分一人なら、頭の中でシュミレーションしながら適当にパパっと動くだけで済むところも、みんなが動きやタイミングを覚えられるように、極力実際の通りにやるようにしました。自分のための稽古というより、自分を含めたみんなのための稽古という感じ。

今思えば、それがほんとに良かったのだと思います。
いい加減な私が、自作自演のものの中でここまで稽古通りにやれた本番は今までにありません。

結果、本番はノーミスでした。受付での対応も、会場での誘導も、本番のオペレートも。
もし失敗したら私がカバーしようと思っていましたが、そんな必要は全くなかったです。
オペレーターが学生だという事、言わなければお客様も気が付かなかったのではないでしょうか。
音響や照明のきっかけの数はかなり多く、タイミングもシビアでした。私だったらやりたくないぐらい込み入ってました。
一回はけるごとにものすごいスピードで早替えをしていたのですが、その段取りも完璧でした。私は言われるがままに着たり脱いだりしていただけです。

これには正直びっくりしました。
とどこおりなくできるように稽古は重ねたつもりですが、それでも時間が十分にあったとは言えません。何か失敗しても責められるべき環境ではなかった。
ほんとに、よくやってくれたと思います。

そしてその原動力は、やっぱり「好き」だと思うのです。
劇場が、舞台が、お芝居が、歌が、踊りが。

今回の作品は、期せずして「職業」がテーマになりました。
決して学生達のために作った作品ではないのですが、やっぱりこれは彼女達に捧げたいと思います。
今後彼女たちがどんな職を選び、どんな風に生きていくのかは分かりませんが、「好き」がどれだけ自分たちに力をくれるのか、他人に力を与えるのか。覚えていてほしいなと思います。

あと、「好き」だけでやってきても、何とかなるよ。
とりあえず、38歳の私は今すげー楽しく生きてるよ、ってことも。

1 件のコメント:

  1. えりなさん、この文章すごくいいですね。
    今頃ですが、読んで感動。

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