2012年7月31日火曜日

「蜜 室」への思い

ここのところブログを書く気力がない、ってのが本音ですが、
今回の新作公演「蜜 室」について、ほんとにほんとに気力がなくなる前に
書いておきます。


作品を作るのはまずタイトルから、と言っても過言ではありません。
宣伝の都合とか色々ありますしね。
タイトル決まらない事には何も動かないのです。

もやもやしたコンセプトや何かが、タイトルという形を与える事で
はっきりしてくる、というのもありますし、
皆で共通見解を持つのにも役立ちます。


作品タイトルは毎回部長がつけますが、
今回は割と早かったです。


内部事情的な話しにもなりますが、作品の根幹でもあるので
このタイトルになった経緯を書いておきます。

部長の言葉を思い出しながら書いてるので正確ではないかもしれず、
作品の根幹部分にもつながるので予備知識欲しくない!って方は
読まずに食べてください。





いたるところに書いてますが、我々まことクラヴは、
そもそものスタートから「劇場を出よう」というコンセプトで
活動してきました。

ちょっと長くなりますが、第一回部活動報告会の当日パンフレットに
部長が書いた文章を転載します。



初めて訪れた街を一人歩いていたらいつの間にか迷ってしまい
迷路のように入り組んだ薄暗い道をさんざ歩き回った揚句
路地の角を曲がった先の袋小路辺りが変に賑やかしいなと覗いてみた処
なにやら得体の知れない催しだか事件だかがそこで起きていて
これは見物したものかイヤ止しておこうか云々…
と迷ってみたいものなのですが実際はそんな事、
滅多に起こってくれやしません。
仕方がないから自分で起こすのです。




ダンスというものをどう捉えるか、という話しにもなりますが、
部長にとってダンスとは、「場が踊ること」なのだそうです。


2001年に活動をスタートして以来、それはそれは色んなところで
踊ってきました。踊らせてきました。


駅のホーム、横断歩道、カフェ、商店街、美術館、映画館、
廃墟、路面電車内、オフィス、空港…


「何をするか」よりもまず、「どこでやるか」のほうが
重要でした。
自分達で「サイトスペシフィックカンパニー」とか
適当に自称してきたぐらいです。


劇場公演をするにしても、まず部長がその劇場を飽きるぐらいに
下見して、その「場」をどう生かすか、という事を考える事から
始まります。


まことクラヴの代表作と言っていい「事情地域」の初演では、
吉祥寺シアターの奥のシャッターを開けて、目の前の道路から
タクシーに乗ってはけました。

金沢での再演では、シアターの扉を開けた先の廊下で
ダンサーが踊っている、さらに後ろの階段を、作業員の方が
通り過ぎる、というシュールな光景が見られました。


劇場の中と外、日常と非日常、その境界線をいかに交わらせ、
超えて行くか、という事に常に心を砕いてきたように思います。


そのために、映像の使用も多かったのです。






今回、トラムで公演をさせて頂くにあたり、トラムの
プロデューサーの方が一昨年の横浜での公演を見に来て下さいました。


象の鼻テラスで行った「事情地域ヨコハマ」では、
もちろんじゃんじゃん外に出るし、あちこち開けたり閉めたり、
テラスの機構を最大限に生かし、さらに横浜中で撮影した映像を
ふんだんに使いました。




その公演を見たプロデューサーの方が、終演後に部長にこう言ったそうです。
「うちはどこも開いたりしないつまんない劇場ですけど、
よろしくお願いします」と。




いや、そんな事ないんですよ。




トラムと言えば、真ん中にそびえるでっかい扉が特徴です。
あれを開けると物置みたいになっていて、
さらにその先の扉を開けると自転車の駐輪場に出ます。
形だって普通じゃありません。


それを「どこも開かない」と先に言われた事で、
「開けんじゃねえよ、真っ向から劇場作品に取り組みやがれ」と
言われたように感じたそうです。


プロデューサーの方がこんな柄悪いわけじゃないですよ。
あくまで印象です。






そしてその5ヶ月後、震災が起きました。


現実がフィクションをあっと言う間に凌駕しました。


そして、未だに続く原発問題。


我々表現に携わる人間は、皆一様に自分達の
やっている事の価値を問い直さざるを得ませんでした。




震災の最中、その問題について特に言及する事のなかった
部長ですが、考えなかったわけはありません。




先日、稽古が行き詰まり、動くのをやめて稽古場で丸くなって
話していた時でした。


そもそもなぜこのタイトルなのか。
「密室」ではなく「蜜室」なのか。


ぽつりぽつりと部長が話しだしました。




あるダンサーが言ったそうです。


現実が大変な事になっている今、劇場に足を運ぶ気が
全くしない。
それどころじゃない、と。


それを聞いた部長は、「俺はそんな事ない」と思ったそうです。


自分は虚構に随分救われてきたし、
虚構の持つ力を信じている。


現実が大変な今だからこそ、劇場のドアを閉めたその中では
素晴らしい蜜のような時間が流れていて欲しい。


ドアの向こうが大変なことになっているのなら、
俺はいっそ劇場の中で虚構とともに朽ち果てたい。


と。




だからこそ、今、敢えて劇場に自ら閉じ込められる
覚悟なのだと。




この話を聞いて、私たち部員も覚悟が決まったように思います。




たかがダンス。
されどダンス。




このたかが、がないと生きて行けない人種がいるのです。
その渇望は、切実です。






自分達が長い時間をかけてやって来た事、
ずっと信じて来た事、
それに自信を持って、改めて信じる。










そのような思いで、ただいま絶賛稽古中です。




蜜のような時間を皆様に味わっていただけるよう、
あと8日、全力で作品に向かいます。




全然働かない頭でぐわしっと書きなぐったので、
明日あたり後悔して消しちゃう可能性も
なきにしもあらずですが、とりあえず記しておきます。




まことクラヴ新作公演「蜜 室」。
どうぞ見にいらしてください。




http://makoto9love.com/news.html

2 件のコメント:

  1. >たかががないと生きていけない人種

    はい\(^o^)/
    まさに、あたくしでございますっ。
    て、これ、リアルに、真面目に話、ほんとにそーなんですよ。
    この真面目さは、たぶん、まったく理解できない人も居ますでしょうし、反対に、わかりすぎるほどわかってくれる人もいるでしょうね。
    まあ、わかってくれなくても仕方ないし、最終的には自分と自分の大切な人が幸せならば。
    それで、良いとゆーか。
    それでしか、ないとゆーか。
    そんな気持ちの、今日この頃であります。
    蜜ね。
    ダンサーも役者さんも芸術家さんも。
    素敵な人々は、私にとってはお花ですから)^o^(
    私は蜜蜂として、美味しい蜜を求めにゆくだけです♪(´ε` )
    おほほほほ。

    返信削除
    返信
    1. 理解はされなくても、心をほんの少しでも動かすことはできる、と信じて精進します。

      是非感想聞かせて下さいね。

      削除